憂しと見し世ぞ今は恋しき

中学受験理科講座 てこの性質

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てこの3点

「てこ」と「てんびん」

Haru_You
今回は「てこ」について話をするよ。
とはいっても、理科で扱う「てこ」ってのは、ほぼ「てんびん」のことなんだけどね。

てこって、重いものの下に棒はさんで持ち上げるやつだよね?
てんびんは左右に皿があって重さがつり合うやつだから、全然違くない?
はるか

Haru_You
棒で重いものを持ち上げる道具もてんびんも、どっちも「てこ」なんだよ。
「てこ」は「支点」を中心に回転する棒で、力の向きを変えることができる道具のことなんだ。
一般的には、つり合わせて使うものを「てんびん」、大きな力を取り出すために使うものを「てこ」と呼び分けてるかな。

理科ではつり合った状態の計算をするから、「てんびん」ってことか。
はるか

Haru_You
でも、そこを区別する必要はないので、すべて「てこ」と呼んで話をしていくよ。

支点・力点・作用点

Haru_You
さっき「支点」という言葉を出したけど、てこにはあと「力点」「作用点」という点がある。
力点は力を加える点、すなわち使うときに持つ部分のことだね。
作用点は力がはたらく点で、その道具が実際に仕事をする部分のことだよ。

じゃあ、てんびんの場合はどっちが力点でどっちが作用点なの?
はるか

Haru_You
てんびんでは力点作用点の区別がないんだ。
この3点を聞かれるのは、力点がはっきりしている、持って使う道具だから気にしないで。

力点がどこにあるかは、持つ場所を考えればいいってことね。
はるか

Haru_You
なんだけど、ポイントになるのは3点のうち、他の2点の間にくるのがどの点かを考えることだよ。

他の2点の間にくる点は、道具によって違うの?
はるか

Haru_You
うん、「てこ」で一番最初にイメージする、「他のものを持ち上げるてこ」である釘抜きや、「中央が固定されているてこ」のはさみなどは、支点が他の2点の間にくるてこだね。

はさみもてこの仲間なんだ。
はるか

Haru_You
支点で指の動く向きと刃の動く向きが逆になるし、加えた力より大きい力でものを切るからね。
それから、作用点が他の2点の間にくるてこは裁断機(カッター)や栓抜きなどがある。

栓抜きは先端部分が支点で、手前の部分で栓をひっかけて抜くからか。
はるか

Haru_You
あとは、力点が他の2点の間にくるてこで、和ばさみやトングなどがある。
これは前2つと役割が違うてこなんだよね。

仕事の原理

力点が間にあると、どう違うの?
はるか

Haru_You
前2つのてこは、「大きな力を取り出す」ためのてこなんだ。
具体的にいうと、支点〜力点の距離が、支点〜作用点の距離より遠くなると、力点を大きく動かす必要があるけど、作用点での力は力点に加えた力より大きくなるんだ。

でも、力点が間にあったら、支点〜力点の距離の方が近くなるよね。
はるか

Haru_You
うん、だから力点が間にあるてこは、力点を少しだけ動かすと作用点が大きく動くんだ。
トングとか思い出してみればわかるでしょ。
だけど、作用点ではたらく力は力点で加えた力より小さくなってしまうんだ。

距離で得をすると力で損をして、距離で損をすると力で得をするんだね。
はるか

Haru_You
うん、その「距離で得をすると力で損をして、距離で損をすると力で得をする」という考え方を「仕事の原理」といって、てこについての問題のすべてで使うから、覚えておいてね。

てこのモーメントとつり合い

モーメント=距離×力

Haru_You
ここからは、支点を中心に自由に回転できるてこを使って考えるよ。
てこの右側におもりをつるしたら、当然てこは右に回転する。

そりゃ、おもりの重さがかかるんだから動くよね。
はるか

Haru_You
この「てこを回すはたらき」のことをモーメントというんだ。
モーメントは、「支点からの距離」×「力の大きさ」によって、数字で表すことができるよ。

じゃあ、支点から30cmのところに50gのおもりをつるしてたら、30×50=1500って計算するってこと?
はるか

Haru_You
うん、単位はcmじゃなくて「目盛りの数」でも、gじゃなくて「同じおもりの数」でもOK
1つの図の中で、同じ単位を使っていれば、単位は何でもいいんだ。
このモーメントの値が、てこのつり合いを作るんだ。

左右のモーメントのつり合い

Haru_You
てこの左右でモーメントの値が等しくなったとき、てこはつりあって、回転を止めるんだ。

じゃあ、左右でおもりの重さが違ってもつりあうんだね。
たとえば、左側5目盛りのところに20gのおもりをつるして、右側1目盛りのところに100gのおもりでもいいんだよね。
はるか

Haru_You
うん、それなら左右でモーメントが5×20=1×100で等しくなるね。
逆にいえば、おもりの重さが同じでも、支点からの距離が違ったらつり合わないで、モーメントが大きい方に傾くよ。
また、モーメントは同じ向きのものは合計して計算するんだ。

じゃあ、2目盛りのところに20gと、6目盛りのところに10gだと2×20+6×10=100になるってことか。
はるか

Haru_You
この単元はその計算さえ理解すれば、8割がた完成だよ。
やることはモーメントの計算、それとモーメント÷力=支点からの距離モーメント÷支点からの距離=そこにかかる力、という逆算だけだから。


上向きの力と下向きの力のつりあい

Haru_You
てこにはもう1つのつりあい、上向きの力と下向きの力とのつり合いもあるんだ。

力?モーメントじゃないの?
はるか

Haru_You
うん、この計算をするときにはモーメント、支点からの距離は関係ない。
単純に、つるした重さの合計と、持ち上げる力の合計が等しくなるというだけだよ。

100gつるしてあったら、どこにつるしてあっても、どこから持ち上げても、100gの力で持ち上げてるってことね。
はるか

支点の位置とてこの計算

支点が複数あるてこ

Haru_You
てこの支点は1ヵ所とは限らず、複数の場所をつるしたり、下から支えたりする場合もあるんだ。

支点が2ヵ所あったら、モーメントはどっちの支点で計算すればいいの?
はるか

Haru_You
自分で好きな方を計算上の支点と決めればいいんだよ。
どこから計算しても、必ず最後は同じ答えが出てくるから。
たとえば上の例では、右側を支点で計算しているけど、左側のばねはかりを計算上の支点にしても計算できるよ。

左のばねはかりから見たら、40×50+80×30=4400のモーメントだね。
そしたら、右側の支点が4400÷100=44g支えているってなって同じ答えになるね。
はるか

Haru_You
で、このときに下向きの力(おもりの重さの合計)が80gだから、上向きの力も合計80gになるので、今支点にしたばねはかりは80−44=36g、って求めればいいんだ。

逆比を使ったてこの計算

Haru_You
てこの計算でもう1つ考え方があって、おもりをつるした棒を両端から支えたときには、両端からおもりまでの距離と、両端にかかる力が逆比になるんだ。

100gのおもりが左端から棒を3:2に分けるところにつるしてあったら、両端にかかる力は2:3、40gと60gになるってことね。
これって、食塩水の濃さで使うやつだよね。
はるか

Haru_You
うん、あれをてんびん図といったけど、このてこの考えなんだ。
支点に近い(距離が小さい)ほうに大きい力がかかるのは、あたり前のことだからね。

逆比が使えるときはこっちのほうが簡単だよね。
はるか

Haru_You
シンプルな図のときなら逆比のほうがいいね。
でも複雑になってきたら、きちんとモーメントを計算しないと失敗するから、まずはモーメントでしっかり練習してみること。

重心と棒の重さ

棒の重さ

Haru_You
ここまで、てこを作る棒に重さは考えていなかったけど、棒に重さがあるような問題も出されるんだ。

ていうか、重さのない棒のほうがおかしいよね。
はるか

Haru_You
棒に重さがあると、うまく真ん中でつるさないと棒が傾くし、うまくつるすと傾かないのはわかるよね。
うまく傾かないようにつるせる点のことを、重心というんだ。

棒がまっすぐだったらいいけど、ななめになって太さが違ってたら無理じゃない?
はるか

Haru_You
いや、どんな形の棒でも、必ず重心は存在するんだ。
太さが一様でない棒なら、真ん中よりも太いほうに寄ったところに、重心があるはず。

重心の見つけかた

じゃあ、重心ってどうやって見つけたらいいの?
はるか

Haru_You
実際にある物体だったら、適当にひもで垂直につるした線の交点が重心だね。
理科の問題で重心を見つけるときは、重心には物体のすべての重さがかかると考え、物体の重さと同じ重さのおもりをつるしてつりあう位置を見つけるんだ。

つまり、どうすればいいの?
はるか

Haru_You
一番よく使うのは逆比による考え方で、棒を左端と右端でつるしたとき、それぞれにかかった力と、両端から重心までの距離が逆比になるんだ。

棒の左端で50g、右端で40gだったら、左端から4:5の点に棒の重心があるってことね。
結構簡単だね。
はるか

棒に重さのあるてこのつりあい

太さが一様な棒の例題

Haru_You
実際に、棒に重さがある問題を解いてみよう。
まずは□の長さを求める問題だ。

左と右でばねはかりの合計が70+120=190gだね。
で、棒の重さが100gって書いてあるから、おもりの重さは190−100=90gってわかるな。
はるか

Haru_You
うん、そこに注目するのは正解。
棒に重さがあるときは「上向きの力の合計」=「下向きの力の合計」から、棒かおもりか、分からない重さを求められることが多いからね。

あとは両端でつるしてるから好きな方を支点に、だよね。
右端からの長さを聞いてるから、右端を支点にしてみよう。
あとはモーメントの計算で、左端のばねはかりは右端から90cmで70g、90×70=6300の左回りのモーメントだな。
はるか

Haru_You
それと右回りのモーメントをつり合わせるんだ。
で、このとき重心の棒の重さと同じ重さのおもりをつるして考えるのが一番大切なポイントだからね。

重心は棒の真ん中、右端から45cmだから棒の重さによるモーメントが45×100=4500、なのでおもりによるモーメントが6300−4500=1800、だね。
そしたら右端から□cm、90gだから、□×90=1800より、□=20cmだ。
はるか

Haru_You
よくできました。
モーメントの計算「支点からの距離×力」に加えて、「支点を自分で決める」「上向きの力=下向きの力」「重心に棒と同じ重さのおもり」ができれば、どんな問題でも解けるから練習してみてね。

太さが一様でない棒の例題

Haru_You
次は太さが一様でない棒で、ばねはかりにかかる力を求める例題だ。

左端で100g、右端で50gだから、逆比の1:2に棒を分ける点が重心だね。
棒が60cmだから、左から60÷(1+2)×1=20cmの点が重心かな。
はるか

Haru_You
うん、両端にかかる力の逆比で棒を分ける点が重心、だったね。

そしたら、重心に棒と同じ重さの150gをつるして、右のばねはかりの力を求めるから左端支点でモーメント計算だ。
はるか

Haru_You
それで正解なんだけど、実はこの問題、図につるした30gのおもりが左右に1:2に比例配分されるから、右のばねはかりに20gたすだけで解けたりしてね。


さおばかり

さおばかりの使いかた

Haru_You
最後に、てこを利用した道具である「さおばかり」について説明しておこう。

はかりってことは、重さを量る道具だよね。
真ん中を支点にして、おもりを取り替えて左右でつりあったときの重さを量ればいいんじゃないかな。
はるか

Haru_You
それは上皿てんびんだな。
それだとおもりが何種類も必要で、実用には向かないんだ。

じゃあ、おもりは1種類でもつるす位置を変えてつり合わせて、モーメントから重さを求めればいいのか。
はるか

Haru_You
その通り。
さおばかりは重さを量るものを皿に乗せて、つるしたおもりを動かしてつり合ったとき、棒につけておいた目盛りを見れば重さが分かるようにしてあるんだ。

さおばかりの作りかた

理屈はわかるけど、どうやって棒に目盛りをつけておくの?
はるか

Haru_You
まず、棒の重さと何も乗せない皿が、ちょうどつり合う支点をつくっておく。
場合によっては、何も乗せない皿とのつりあいにもおもりを使うこともあるけど、そのときはモーメントを1つ増やせばいいだけ。
たとえば、支点から皿まで20cmにしたらつり合ったとしよう。

皿の重さは?
はるか

Haru_You
棒の重さとつり合っているなら、このあとの計算に皿の重さは関係ないよ。
支点と皿が20cm離れていたら、皿に10gの物体を乗せるとモーメントはいくつ増える?

20×10=200増えるね。
はるか

Haru_You
じゃあ、200gのおもりを用意しておけば、支点から1cmのところにつるすとつりあうはずだ。
だから、1cmのところに「10g」って目盛りがつけられる。
皿に乗せた物体が20gなら、モーメント400だから2cmのところに200gのおもりをつるせばいいよな。

そっか、1cmにつき10gが量れることになるんだ。
はるか

Haru_You
このとき、用意したおもりの重さ÷皿と支点の距離=1cmで量れる重さになるんだ。
逆に言えば、1cmで量りたい重さ×皿と支点の距離=おもりの重さになるから、おもりを変えればいろいろ量れるんだよ。

てこの性質  一問一答演習問題プリント

演習プリントには、Excelファイル版とPDFファイル版があります。
Excelファイル版はリロード・再計算(F8)するたびに数字や配列が変わります。
マクロは使用していませんので、セキュリティ警告はありません。
なお、PDF版では20問の収録ですが、Excel版にはより多くの問題を収録しています。
はるか


ばねの性質
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はるか