憂しと見し世ぞ今は恋しき

緊急事態宣言下での塾と中学受験

コロナウイルスの影響で、中学受験の学習塾業界にも営業自粛要請が出ています。
この状況に思うことを書いておきます。

塾が休業しない理由

 塾の教室はまさに「3密」ですから、この期に及んで教室営業を続けている塾はかなりのチャレンジャーとしか言いようがありません。でも、塾としては授業を続けざるを得ないのです。
 塾にはカリキュラムの問題があります。中学受験の学習は年間カリキュラムがかっちり決まっています。これを崩すと調整が非常に面倒になります。しかも、今年は夏休みも学校がありそうです。例年ならば夏期講習という形で長時間授業できていた部分も削られる可能性が高いので、できるだけ授業を止めずに進めたいのです。
 万が一止めてしまった場合、動いている塾に生徒を取られるという危惧もあるでしょう。授業を止めてしまったら月謝の返金が必要になってきますから、それを避けたいというのも経営体力のない塾では本音でしょう。

動画授業で同じ月謝?

 中規模から大手塾は教室での集団授業を止めて、映像通信授業+個別質問対応という形式に切り替えているところが多いようです。大手では元々動画授業を取り入れていたところもありますから、通塾生にそれを開放する形にしていますが、中小規模の塾ではとりあえずyoutubeやzoomなどの無料インフラを利用しているところもあるようです。
 前述のようにカリキュラムを止めないため、というのもありますが、それよりも塾の本音は授業をした、というアリバイ作りでしょう。とはいっても、急拵えの無料インフラを利用した動画授業なんかで同じ月謝を請求されるのはあり得ないと思うんですが。
 動画やタブレットを利用した形式の学習であれば、それ専門でやっているところのほうが圧倒的に良質で安上がりです。といっても、中学受験の学習でメインのカリキュラムをそういった通信系でまかなうのはムリでしょう。

小学生に動画授業はムリ!

 とはいえ、小学生に映像通信授業は難しいでしょう。先生が目の前にいても集中できない子どもたちが、自分に向けて話しているわけでもない映像に集中できるわけもありません。高校生であれば自分の問題意識でわからない部分を何度も繰り返し再生して効果のあがる動画授業ですが、それができる小学生ならそもそも映像も要りません。
 ビデオ会議などのシステムで双方向性を謳っているものもありますが、これまでであれば教室での密な状況でコミュニケーションを取りながら、先生が生徒の解いているところをチェックしながら、それでもなかなか理解が進まない中学受験の学習です。とってつけたようなビデオ会議でうまくいくはずもありません。塾側もそれはわかっているんですが、とにかく他所より面倒を見ているから退塾しないで、というアリバイ作りです。

転塾するタイミングではない

 しかし今、通っている塾の対応が悪いからといって、転塾するべきタイミングではないでしょう。塾側も混乱していますし、保護者にとっても子どもにとっても動ける時期ではありません。
 ただ、これまでと同じ月謝を払って中途半端な映像授業など受けるくらいなら、この状況が収まるまで休塾したほうがマシでしょう。中身の薄い授業を受けるより、その分家庭で学習カリキュラムを進める方が確実です。保護者が学習を見られない場合、短期ででもインターネット家庭教師などを依頼するのが有効でしょう。

 おそらく今年の受験は,この時期をどう過ごしたかが勝負になるはずです。学校が休みなぶんだけ受験勉強に時間が使えるうえに、夏期講習会が例年ほど長く取れないわけですから。
 前例のない事態ですから、大手の持っているノウハウの強みは弱まり、受験生1人1人の状況に合わせた指導がより重要になります。学習面でのご相談、ご質問などありましたら、お気軽にご連絡ください。