中学受験 社会科のおすすめ教材と学習法(1)

社会科は暗記科目なの?

かつては「暗記科目」と言われてきた社会科ですが、近年のアクティブラーニングブームや適性検査型入試の流行により、一問一答型の知識問題の分量は減り、読解力と分析力が要求されることが増えてきました。
・・・が、実際のところ、「社会科の常識」がないと分析まで踏み込めなかったり、ちょっと知らない用語が出てきただけでパニックになって勘で答えてしまう、なんてことが増えます。
たとえば、こんな問題があります。

2018年浦和明の星女子より「世界ジオパーク」に関する出題

浦和明の星女子2018年第1回入試大問1・問4

洞爺湖・有珠山は、2009年に日本初の世界ジオパークに認定されました。ジオパークは自然公園の一種で、自然環境の保護・保全に加え、教育・地域の活性化を行う点で、世界自然遺産と異なります。日本国内の世界ジオパークのある場所に関する説明文として正しいものを選びなさい。

ア.新潟県糸魚川市付近は、2つのプレートの境界に位置し、静岡までつながる山脈がみられる。この山脈をまとめてフォッサマグナと呼んでいる。
イ.洞爺湖は周辺の火山が多量のマグマを噴き出し、陥没してできたカルデラに水がたまってできた湖である。
ウ.阿蘇山は江戸時代の噴火により、山の一部が崩壊し、鹿児島湾に土砂が流れ出た結果、津波により対岸の大隅半島に大きな被害をもたらした。
エ.隠岐は鳥取県に位置し、過去に本州と陸続きになったり分かれたりした結果、珍しい生態系がみられるようになった。

地理が苦手な子は、まず「ジオパーク」で「あ、知らない」となります。
なので勘で適当に選び始めます。
まあ、それでもウは桜島のことで違うことはわかるでしょうが、次に「ジオパークであるかどうか」なんてことを問われているのかと勘違いします。
地理もしくは地学オタな子なら日本国内の世界ジオパーク9ヶ所を覚えているかもしれませんが、この問題が要求しているのはそこではないですね。

ちなみに、世界ジオパーク9ヶ所ってのは洞爺湖有珠山、日高山脈アポイ岳、糸魚川、隠岐の島、山陰海岸、室戸岬、阿蘇山、島原半島、伊豆半島ですね。

アのフォッサマグナは「大地溝帯」という日本語名を知っているか、あるいはプレートが沈み込んでいるという理科の知識か、もしくは小松左京の「日本沈没」を見ていれば「山脈」じゃないことはわかりますね。
まあ、知らなくても日本アルプスと越後山脈の位置関係を考えると、「糸魚川から静岡まで続く山脈」は違和感を感じますよね。
イの洞爺湖はカルデラ湖だっけ?というところで悩みますね。
田沢湖十和田湖はカルデラだって覚えているかもですが、北海道の湖では道内面積1位のサロマ湖は汽水湖で、屈斜路・支笏・洞爺の3つはカルデラですね。
よってイが正解なのですが、そんなこと知らなくても消去法でイに持ち込む方がいいですね。。
エは隠岐の島なんて後鳥羽上皇以外でまず出てこない名前ですが、意外とジオパークだったりします。
ここはその事実より、「鳥取県」という一言がどうせ鳥取と島根の区別はつかないだろうという軽いdisりを感じさせます。
そう、隠岐は島根県ですね。

この問題を「難しい」と思ってしまう子、もしくは難しく教えてしまう指導者は、ジオパークの知識だったり、カルデラ湖の知識で解く問題だと考えちゃってるわけですね。
そうじゃなくて、ごくごく簡単な知識と、文章の読み取りだけで解く問題であることを理解しないと、社会科の点数は上がっていきません。

その一方で、マニアックな知識問題というものも相変わらず出題されています。

2019年開成中より「上野公園を切り口にした歴史」に関する出題

開成中2019年入試大問1・問8

江戸時代には多くの藩校が設立されましたが、江戸時代末期に水戸に設立された藩校の名前を答えなさい

果たして弘道館って答えられる受験生はどれくらいいるのかな?とも思いますが、一昨年も「上野寛永寺を創建した僧は?」という問を出してきましたし、このレベルの知識を一問ぶっ込んでくるのは想定の範囲内です。

実は中学受験者、特に男子難関校志望者の中には一定数、とんでもない知識量を誇る子が混ざっています。
時刻表とマンガ日本の歴史を皮切りに、日本国政図会とか山川の日本史教科書とか読みあさって、知らなくていいことまで大量に覚えてきちゃいます。
とはいえ、その勉強は本人にとって勉強じゃなくて余暇として楽しんでいるような。(僕がそうでした・・・)
そういった子は大学受験まで、それこそ学校が何も教えなくても社会を得意科目のまま育ってくれますから、学校側としてもありがたいんでしょうね。
社会1科目と英語さえできれば私立文系はかなり楽になりますから。

でも、そんな重箱の隅までつついて覚えるような勉強は必要があるかというと、絶対に必要ありません
開成の社会なら、さっきの問題なんか正解しなくても合格ラインには届くはずです。
ただ、社会は勉強しないでもできる、そういうライバルがいることも意識しないといけないということです。

ここで取り上げた2校は最難関校ですが、中堅校志望の場合もどれだけ常識としての知識量を押さえてあるか、は社会科の得点力に大きく関わってきます。
知識問題は減ったとはいえ、それは知識を聞くだけの問題から知識を前提とする問題に変わった、というだけのことです。

理社は後回しにする?

よく、「理社は追い込みが利くから後回し」なんて言い方もされますが、社会は長期戦でやったほうが楽、というのが僕の持論です。
モチベーションが高まりきって解いた分だけ力が伸びる、終盤の追い込みの時期に暗記作業を回すのはもったいなさ過ぎます。
終盤に算数の実力アップの時間を確保するためにも、社会は早めに固めておきましょう。
また、以下も早めに社会を固めたほうがよい理由です。

塾カリキュラムでの小6後期社会

塾に通っている場合、小6後期カリキュラムは単元別やテーマ別で入試問題をベースにした演習が入ってきます。
が、知識の裏付けがないままに過去問レベルの演習を繰り返しても成果はあがりません

演習のあとに弱点単元の知識チェックや直しノート、単語ノートなどの指導までする余裕があればよいのですが、大手塾ではその部分は家庭でやってね、ってことになっています。
とはいえ小6後期で授業外にも過去問や特訓、他の科目との兼ね合いも見ていくと本人にそんな時間はなかなか取れません。

なので親が必死にプリントやテキストのコピーを切り貼りしたノートを作る、ということになります。
指導側がデータ出せばあっという間に終わるはずなんですけどね、これ。

「総復習」の罠

社会を後回しにしたときに陥りがちな罠が「総復習」を始めちゃう、ということです。
受験最終盤になってから社会が弱いことに焦り、「知識の総復習」的な問題集を一から始めてしまうのですが、終盤ですとその問題集の掲載内容のうち5~6割、下手すると8割以上はすでに覚えていることだったりして、時間の無駄遣いをすることになります。

限られた時間で効率的に学習するためには、「自分がすでに覚えたこと」と「まだ覚えていないこと」の区別ができるか、ここが重要になります。
そのためにも、小6前期までに総復習系の教材を一冊は終わらせておきましょう
四谷や日能研のss50前後まででしたら、知識総復習一冊と過去問である程度まかなえると思いますが、難関校志望の場合もう一歩踏み込みましょう。

長くなりましたので、どんな学習法と教材がおすすめかは次回に。

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Posted by haruyou