都立中高一貫校受検に向けての学習法(1)塾の選び方

都立一貫校受検の塾の選び方

都立中高一貫校を志望する場合の塾の選び方ですが、私立中専願者とは違った視点での塾選びが必要になります。
私立中受験の場合、よほど変な個人塾、もしくはバイト任せの個別指導塾を選ばない限りはどこもある程度同じような指導に収束します。
なので、本人にあった塾選びをしてあげればいいのです。

ですが、都立一貫校受検の場合、各塾での指導がまちまちです。
何をすれば合格するか、そこに一般解が見いだせていないわけです。
教材や模試で覇権を獲れる業者が出てきていないのもそのためです。
倍率が高すぎ(合格率が低すぎ)て「この指導だから受かった」と言えないんですね。

そんな中での塾選び、そして学習法について僕の意見を書いていきます。

都立中高一貫校受検に塾は必要?

私立中受験の場合、塾なしで学習するノウハウや、それに適した教材も山ほど存在します。
知識事項の暗記や各自の反復演習など、むしろ塾による集団授業の方が効率が悪い側面もあります。
むろん、塾に行かせた方が競争したり、自分1人が辛い勉強をしているわけではないという連帯感が生まれたりという利点はあります。
ですが、入試で必要な知識を親が説明できるのであれば、塾なしでも十分合格できるでしょう。

一方、都立一貫校受検ですが、こちらは未だに塾なし受験のノウハウが確立していませんし、市販教材もロクなのがありません。
そして、作文と記述答案という適性検査の形式が絶望的に家庭学習に向いていません

作文も記述答案も親が添削することは不可能ではないですが、大人から見た完璧な答案を作れても、子供たちのレベルで書ける答案を作成させるというのはまた違った技術が必要です。
ある答案に10点満点中何点をつけるか、というのが他の子の答案と見比べることができないと難しいんですね。

こと記述の添削においては、毎年やっているプロの手を借りたほうが圧倒的に効果です。

都立中高一貫校受検の実際

しかし、塾に通ったところで、都立一貫校への合格率が飛躍的に高まるものではありません。
私立中受験ならば学力に応じて志望校も上下し、学校ごとにこのくらいの学力なら受かる、というのが見えてきます。
できる子は上の志望校にシフトしたり、足りなければ志望校を下げたりができるので、私立中受験では第一志望校かどうかはともかく、その子なりに合格の見込める位置に行けるんですね。

一方、都立一貫校ではどんな子も最後まで同じ志望校のままでいきます。(一部小石川にシフトするくらいでしょうか)
また、定員までしか合格を出さないシステム上、能力的に高い子がライバルにいたらその時点で負け確定です。

都立一貫校合格者の中には「いっさい塾なんか行かなかったよ~」なんていう子もいたりしますが、そんな子はどこの塾に行っていても合格していたでしょう。
塾から合格した子の中にもそんな子、どこの塾からでも合格できただろうし塾すら不要だった子が混ざっています。
塾のおかげで合格するというよりも、ある程度の能力を持った子たちの中で、本番でたまたま高得点を取れた子が受かっていく、そんな感じの入試です。

とはいえ、塾選びをまちがえなければ昨年の都立一貫校の受験倍率5.70倍、これよりは合格の可能性は上げられるでしょう。
逆に言ったら、その数字合格率17%を下回っている塾(教室)には絶対通わせるべきではありません

そんな塾(教室)あるはずないじゃんと思われるかもしれませんが、都立一貫受検は少ないパイの奪い合いなので受験者全滅なんてことがざらにあります。
某大手塾は都立○○校に△△教室から何名!とか広告に書いてましたが、なんで一番その学校の近くにあるお膝元の教室(生徒が数十名いたはず)じゃないんだろう?と地元民はみんな思ったことでしょう。

都立一貫校受検で選んではいけない塾

まず、「公立一貫校」のくくりで指導している塾はダメです。
都立一貫校と千葉・神奈川・埼玉の県・市立一貫校、および国立の東大付属は同じ「適性検査」を実施してはいますが、その内容は大きく異なります。

適性検査に向けて基礎学力と記述力を高める指導をしているわけですので、都立一貫校に合わせた指導でなくても合格者は出るでしょうが、そんな子はどこの塾へ通っても(もしくは塾なしでも)合格する子です。

次に、「都立中受検+高校受験準備コース」のような設定、これも危険です。
独立クラスでは採算が取れない教室事情もあるでしょうし、都立中受検に向けて学習習慣や記述力をつけた子は高校受験に向けての基盤ができているのでこういったクラス設定をする塾の事情もわかるのですが・・・。

ぶっちゃけ、この設定は塾側からしてみたら本気で全員合格させるつもりはな、合格して欲しくないってことなんですね。
「何人受かるか」より「何人中学コースに残せるか」こっちの方が主眼目です。
中1~中3までそのまま塾に残ってくれれば、多少特待つけても+100万の売り上げになりますからね。

教室に確認すべき指導方針

では、何を基準に選べばよいのかとなりますと、まずは「教室単位での合格者数と割合」です。
大手チェーンですと○○中合計△△名!とか謳ってますが、私立中の場合と違って塾全体での都立一貫校合格者数には何の意味もありません

私立中の場合、合格数が多いということはその学校への対策が十分である、ということ以上に=そのレベルの生徒が多い=競争力をつけられる、という意味が大きいのです。
しかも合格数を定員より多く出しますので、競争の結果として生徒が実力をつけられれば、その教室でみんなが合格できるのです。

ところが、都立中の場合は合格定員が厳格に定まっていますので、競争になれば同じ塾のなかで、1つの教室の中で合格数を食い合います
人数が多ければいい、というものではありません。
残念な教室ではみんな共倒れという事態が発生するわけです。

また、人数を売りにしているチェーンの塾では教室単位で指導力に差があることも珍しくありません。
少なくとも受験倍率の5.7倍より明らかに合格率の高い教室でなければ、たとえ数十人合格させている塾でもその教室では受講する意味がないといっていいでしょう。

次に教室に確認すべきは「添削指導の体制」です。
人数の多い教室ですと講師の手が回らず、演習教材や過去問を生徒自身がマルつけする場合があります。
計算問題や記号問題ならよいのですが、適性検査独特の記述解答について生徒自身がマルつけしてもきちんとした判断ができません。
いいかげんな子だと、誤字があろうが内容が違っていようが書いていればなんとなくマルをつけていきます。

また、作文の指導についてもさすがに生徒自身が作文の採点をすることはないでしょうが、どの程度書かせて添削してくれるのかが重要です。
人数が多い教室ですと添削の手が回らず、提出した後何週間も経ってから返ってくるなんてことがあります。

そういう意味では、教室(クラス)内の人数が少ないほうが都立一貫校受検には向いているでしょう。
その場で添削をしてもらえるという点では個別や家庭教師でもいいのですが、なかなかいい講師は見つからないでしょう。
合格率の低さからプロからは敬遠されますし、学生バイトでは過去問を解答例通りに指導する程度しかできないのもネックです。

塾で「基礎学力養成」はムダ

塾としての指導内容・テキスト構成ですが「基礎学力養成」のための時間が長いのは正直、無意味です。
選択授業であればいいのですが、必修として4教科の授業を入れている塾は微妙です。

たしかに、都立一貫校では調査書点が合否に関わってきます
なのでそのような授業がある塾もありますが、そもそも小学校の学習内容程度に塾が必要になる子は、都立一貫校向きではありません

別の記事でも書きましたが、都立一貫校の合格実績は一部上位生徒の頑張りによるもので、中堅下位の子たちの合格実績は芳しくありません。
中堅下位の子たちを平気で振り落とすカリキュラムを組んでいます。
できる子が国立早慶の実績を出してくれればそれでいい、という指導なんですね。

そんなわけで、基礎学力部分の学習は市販の問題集か月5000円程度の通信教育でまかなえる子でないと、進学後に苦労します。
それが無理な子なら面倒見のいい私立中に進学したほうがよほど幸せでしょう。

まとめ

ということで、都立一貫校に向けての塾の選び方としては
・教室・教場単位での実績
・クラス人数
・添削指導
このあたりを重視しつつ、適性検査対策をきちんとしてくれる塾がよい、ということでしょうか。

新着記事

都立一貫校作文問題集

都立中高一貫校のHPで公開されている適性検査問題の作文(適性検査Ⅰ)を1つのPD ...

日本の歴史の歌

社会科、日本の歴史の各時代の重要事項を「アルプス一万尺」に乗せて歌います。。

中学受験理科講座 植物のつくりとはたらき(3)〜光合成・呼吸・蒸散〜

理科の生物範囲、植物のつくりとはたらきについて、光合成・呼吸・蒸散のはたらきにつ ...

月の満ち欠けの歌

中学受験で頻出の11種類の水溶液の名前、液性、指示薬の変化、主な水溶液の識別ポイ ...

緊急事態宣言下での塾と中学受験

コロナウイルスの影響で、中学受験の学習塾業界にも営業自粛要請が出ています。この状 ...