中学受験(検)する?しない?

首都圏の中学受験(受検)率

首都圏在住の小学生の中学受験率は16.3%、東京23区では25%、文京・港・中央・千代田は40%越え、人口の多い杉並・世田谷なども30%を越える受験率というデータ(2017年)があります。
東京都教育委員会の公立学校統計調査報告書なんか見ても細かい数字が見られますね。

東京都公立学校統計調査報告書
この数字、高いと思うか低いと思うか・・・
私立中の選択肢があまりない地方在住の方には想像しにくいでしょうが、23区だとクラスの4分の1の子が小4、小5から塾通いして地元の中学に行かないわけですから、子供たちのコミュニティには大きな影響を与えていますね。


ということでこのエリアにお住まいの親御さん(僕も含めて)にとっては、中学受験させるかどうかというのが子育ての一つの分水嶺となっている感もあります。

地元の公立中学へ?

中学受験しない場合、地元の公立中学校へ進学するわけですが、ここに進学せずに中学受験する子たちは超優秀な子たちをはじめ、一定程度の学力や学習習慣のある子たち(これについては例外のとんでもない罠もありますが)ですから、その残りが進学してくる公立中学校の生徒の質・・・

学校ごとに、年度ごとにすごい差があります。
昨年まで評判の良かった学校が先生の転任や入学してきたたった1人の問題児によって急に学級崩壊なんてこともよくあります。

まあ、周りに流されない芯のしっかりした子なら、周りが荒れてるほうが内申稼げてよかったりもしますが。

 

かといって、私立中に進学は通学時間・距離や費用面でのデメリットが気になりますし、はたしてどちらがいいのやら・・・と、悩んでも答えは出ませんね。
結局は未来のことなのでどっちが子供にとってプラスかはわかりません。

中高一貫校進学のメリット

では、中学受験させて中高一貫校に進むメリットから考えてみます。

大学受験へ向けての6年間カリキュラム

高等部での募集をしない、もしくは少数しか外部募集をしない学校では、英数はだいたい中3の一学期ごろ、早いところでは中2のうちには高1レベルの授業内容に突入します。
結果として高校受験をする生徒にくらべ大学受験に向けての準備期間を長くとれることになります。
2020年以降、大学入試センター試験がGTEC、TEAPなどの外部試験に移行すると高3の4月から受検できるようになるとのことなので、時間的なアドバンテージがさらに拡大します。

これについては、中高一貫校の授業が単にスピードが速い、時間数が多いっていうだけでなくカリキュラム的に整理されてるからなんですよね、特に数学。

指導要領カリキュラムだと場合の数と確率(中学ではPとCを使わない)、2次関数(中学では必ず原点を通る)、平面幾何なんかは中学生で一度やって再び数ⅠAでやるわけですが、この分け方に無駄が多いです。
中高一貫校用の教材だとこの辺が整頓されているぶん、スムーズに進むわけです。

また、理社についても同様でして、中学受験をした子たちの多くは指導要領上での中学範囲の半分くらいは片付いていて、中学理社があまり意味がないわけです。
なので中高一貫校の多くは理社については初めから高校レベルで授業してしまいます。
この間中高一貫校中2の子の日本史のテスト対策プリントをみたら「受領国司と遙任国司の違いについて論述せよ」なんて問題があって苦笑しました。
まあ、このカリキュラムの違いが大学合格実績にどのくらい影響しているのかは別項で書きたいと思います。

設備や部活動、行事などの充実

学校によってその充実度に差はありますが、子供たちにとっての私立一貫校の一番の魅力はここなんじゃないかと思います。
イングリッシュアイランド・サイエンスアイランドを作った山脇なんかは、見に行った子はだいたい気に入って帰ってきますね。

今年も人気の三田国際のようにICT化を進めている学校も多く、校舎中にwifi飛んでて入学するとiPad持たされる、なんてのに子供たちは惹かれたりします。

グラウンドや部活動用のクラブハウス、移動教室や海外研修なんかも各校力を入れていますので、この観点から中高一貫校を選ぶ親御さんも多いかと思います。

学力レベルの近い子たちとともに学べる

前項でも述べましたが、地元公立中にはいろんな子が来ます。
その中には都内なら日比谷・西を目指せる優秀な子もいますが、学力的にはかなりマズい状況の子も多くいます。

僕が指導している塾でも、中3になってアルファベット書けない・小4以上の計算ができない、たぶん検査を受ければ発達系の障害が出るだろうなんて子が来ます。

人間の多様性を知る、ということは人間形成にとってプラスでしょうが、教育現場では非常に迷惑です。困ったことに、公立中の教育ってのはそんな子がいることを前提に授業が行われています。
なのにそんな子たちはそもそも勉強する気はないですから、大なり小なり授業を妨害します。

中高一貫校にはまずそういう子はいませんし(一部例外あり)、自分と偏差値的に同じくらいの子たちが集まった教室ですからおのずと授業のレベルも自分に合ったものになります。この効果も非常に大きいですね。
また、(私立)中高一貫校に子供を通わせる家庭は一定の経済力がありますので、あまり「育ちが悪い」子は多くないはずです。
無論、私立中高にも変なのはいますが、公立校に比べて学校側が積極的に排除できるのも事実なので公立中ほど「荒れる」ことはありません。

中高一貫校のデメリット

充実した設備の中で、同じレベルの子たちと自分に合った授業を受け、行事や部活動に打ち込みつつ大学受験に向けての準備をする。

これを子供たちにとってのメリットと感じない親はいないでしょうね。
でも、中高一貫校に通わせることにはデメリットもあります。
目につきやすいのは当然費用面ですが、他にもいろいろと・・・。まとめてみたいと思います。

私立中学校の学費

東京都が発表した、「東京都内所在の私立中学校の初年度(入学年度)納付金」という資料があります。

それを元に計算すると、私立中学校の3年間の学費が平均して約240万円ということになります。あくまで平均なので、高い学校は300万越え、低い学校は180万前後という感じですが・・・。

 都内私立中
180校平均
授業料(a) 入学金(b) 施設費(c) その他(d) 初年度納付金
(a+b+c+d)
3年間総額
(a+c+d)×3+b
平成30年度 468,090円 254,979円 40,207円 186,140円 949,416円 2,338,290円

これをデメリットと感じない家庭なら何の問題もありませんが、うちには大問題ですw

私立中でも特待を取る、あるいは国公立の中高一貫校ならば学費は抑えられますが、高倍率で狭き門ですので、それを前提にするわけにはいきません。

塾の公立一貫受検コースには「国公立一貫校落ちたら地元の区立中行ってリベンジ」なんて言ってる親が来ますが、そんな子が国公立一貫校受かるのは希です。
だって「地元の区立中行く」って逃げ道を与えられてますから。
ま、この辺の話はまた別のところでします。

成長期の子供への負担

中学受験をするばあい、一般的な塾のカリキュラムだと小4から週2回、小5で週3回、小6後期には学校別特訓なども含めて4,5回の通塾となります。
なおかつ5年次からはいわゆる「塾弁」がはじまり21時帰宅(地域個人塾なんかだともっと遅いことも・・・)てな感じです。
子供が自ら望んでのことならばいざ知らず、親主導で受験勉強を始めた子にはこの生活は苦痛でしょうね。
子供が望んでのことだとしても、受験勉強の期間は習い事・趣味・友人との関係・家族の時間など多くのものを犠牲にする必要がでてきます。
むろん、受験勉強と並行してスポーツや習い事を思いっきり楽しめる要領のいい子もいるんですが。

受験に成功して中高一貫校に進学したとして、それが歩いて10分、自転車で15分なんて立地ならいいのですが、近所に志望校として適当な学校がなく朝早起きして電車通学をする場合、これも子供には結構な負担です。
僕がよく志望校選びで通学面を相談されたときに言うのが、「時間よりも朝の電車の混み具合と乗り換えの煩雑さ」です。
今の子供たちは中学合格祝いにはたいがいスマホを買ってもらってますからw都心から下り方面、始発乗車なら電車乗ってる時間が長くてもそんなに困りません。
通学時に睡眠を確保、あるいは朝テストの予習をする子なんかも多いです。
が、通学経路が埼京線とか田園都市線で渋谷から井の頭に乗り換え、なんて子はもう通学地獄もいいところです。

進学した学校が子供にあわなかったとき

これが一番怖いですね。
学習面でのことならば学校側も手厚くサポートしてくれることが多いのですが、思春期の子供たちの人間関係でつまづいちゃうともうどうにもなりません。

中学3年間我慢して過ごして高校は外部受験、といっても今の高校受験は内申書が大きくものをいいます。内申なしで勝負できる私立高受験をするには学校のカリキュラムは受験に合わせてないので結局塾通い・・・という顛末から結局引きこもりになっていった子を何人も見ています。

そうならないためにも学校選びの段階で親子で後悔しない学校選びをしておくしかないですね。

中学受験する?しない?

結局のところメリットもあればデメリットもあるわけで、最後は個々の家庭と子供自身の判断によるしかないわけですね。
この後どんな子が中学受験向きなのか、どんな学校の選び方をすればいいのか、など書いていきますのでそのあたりも含めお考えください。

学校を選ぶときの資料としては各社から出版されている中学受験ガイドがありますが、僕はサピックスのやつがお気に入りです。

2019年度入試用 SAPIX(サピックス) 中学受験ガイド

もちろん、本には載らない情報なんかもありますんで聞いてくれれば知ってる限り答えますよ。

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Posted by haruyou